腹式呼吸のやり方歌にも話し声にも使える、息の支えの練習
フレーズの終わりで息が足りなくなる。大きな声を出そうとすると、のどが苦しくなる。
そんなときは、声の前に「息」を見直すと、楽になることがあります。
歌っていると、サビの前に息が切れてしまう。会議で話していると、語尾が小さくなって聞き返される。
声の悩みに見えて、実は息の使い方が関係していることがあります。腹式呼吸は、歌う人にも、話す仕事をしている人にも、よく紹介される練習です。
腹式呼吸とは、どこが動く呼吸か

腹式呼吸は、息を吸ったときに、おなかのまわりがふくらむ呼吸のことです。
肺の下にある横隔膜(おうかくまく)という膜が下がります。そのぶん、おなかが前や横に押し出されるように動く、と説明されることが多いです。
反対に、息を吸うときに肩や胸が大きく上がる呼吸は、胸式呼吸と呼ばれます。
胸式呼吸が悪いわけではありません。ただ、歌や発声では、胸式呼吸だと肩や首に力が入りやすくなることがあります。
| 腹式呼吸 | 胸式呼吸 | |
|---|---|---|
| 吸ったときに動くところ | おなか、わき腹、背中のまわり | 胸、肩 |
| 声を出すときに | 首や肩に力が入りにくい | 首や肩に力が入りやすいことがある |
寝ころんで、感覚をつかむ

立ったままだと、腹式呼吸の感覚は分かりにくいことがあります。
最初は、あお向けに寝ころんで試してみてください。寝ころぶと、自然とおなかが動く呼吸になりやすいからです。
- あお向けに寝て、ひざを軽く立てます。
- おなかの上に、片手をのせます。もう片方の手は胸の上に。
- 鼻からゆっくり息を吸い、おなかの手が持ち上がるのを感じます。胸の手は、あまり動かないのが目安です。
- 口から「スー」と細く、ゆっくり息を吐きます。おなかの手が下がっていきます。
- これを5回ほどくり返します。
うまくおなかが動かないときは、別のやり方もあります。おなかの上に軽い本をのせて、本が上下するのを見る方法です。
立って、息を長く吐く練習
寝ころんで感覚がつかめたら、立って同じ呼吸を試します。
- 姿勢:足を肩幅に開き、背すじを軽く伸ばします。肩の力は抜いておきます。
- 吸う:鼻から3秒くらいで吸い、おなかとわき腹がふくらむのを手で確かめます。
- 吐く:口から「スー」と、細く一定の強さで吐きます。
吐く時間を数えて、少しずつ長くしていきます。最初は10秒くらいでも大丈夫です(秒数は見本です)。
大切なのは、長さよりも、最後まで同じ強さで吐けているかです。途中で息が強くなったり、弱くなったりしないように意識してみてください。
練習で使う声の高さを決めるために、今の音域を測っておくのも一つの方法です。
声に「息の支え」をのせる
息を一定に吐けるようになったら、声をのせていきます。「息の支え」とは、声を出している間、息が急にゆるんだり、押し出されすぎたりしない状態のことを指す言葉です。
| 段階 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 「スー」と吐く息を、「ズー」に変える | 息の流れはそのままで、声を少しだけ足す |
| 2 | 楽な高さで「あー」と長く伸ばす | 「スー」と同じく、最後まで同じ大きさで |
| 3 | 「あ、あ、あ」と短く区切って出す | おなかが小さく動くのを手で確かめる |
| 4 | 歌なら1フレーズ、話し声なら1文を読む | 文の最後まで声が小さくならないか確かめる |
歌で使うときは 息つぎの場所を先に決めておくと、フレーズの途中で息が足りなくなりにくくなります。高い音の前で、少し早めに吸っておく方法もあります。
話し声で使うときは 文の最後で声が小さくなる人は、段階4で「語尾まで同じ大きさ」を意識してみてください。会議の前に、段階1〜2を1分だけ行うのも一つの方法です。
話し声の悩みは、声がこもる・通らないときにでもまとめています。
続けるコツと、気をつけること

腹式呼吸は、それだけで声が大きく変わるというより、発声の練習を支える土台として役立ちやすいものです。高い声の練習(高音の出し方)と組み合わせると、息の使い方の違いに気づきやすくなります。
ぜんそくなどの持病がある人、息苦しさが続く人、のどの痛みが続く人は、練習の前に医療機関に相談してください。
息の練習のあとで、今の声の範囲を測ってみましょう。